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季節と肌

【アベンヌのふるさと探訪記③】フランス屈指の医薬品メーカー「ピエール ファーブル社」とは?

アベンヌ温泉水の“肌にいいミネラルバランス”は自然が育んだ奇跡とも言えます。だからなのか、日本ではなんとなく“優しさ”や“ナチュラル”といったイメージを抱かれがちですが、本国フランスでは正反対。むしろ、お悩みに対して積極的にケアをする頼もしい、メディカルイメージの強いブランドとして知られているんです。なぜかというと、アベンヌの母体であるピエール ファーブル社は、フランス屈指の医薬品メーカーだから。

では、なぜ医薬品メーカーがアベンヌスキンケアを開発したのでしょうか? 創始者のピエール ファーブル氏っていったいどんな人? 今回は、アベンヌ製品の生みの親「ピエール ファーブル社」についてご紹介します。

並外れた先見の明でアベンヌを世界的ブランドに!「ピエール ファーブル社」ってどんな会社?

ピエール ファーブル社は、薬剤師だったピエール・ファーブル氏が創設したフランスの医薬品メーカーです。1940年、ファーブル氏はトゥールーズ大学の薬学部で薬剤師の資格をとり、その後故郷であるカストルという町にあった小さな薬局の権利を買い、経営を始めます。

当時カストルは、織物工業で栄えていた町で、薬局には工場で働く人たちがたくさん訪れていました。ファーブル氏は薬剤師としてさまざまなお悩みに耳を傾けているうち、工場で働く人々が立ち仕事による足のむくみに悩まされていることを知ります。そこで他のスタッフとともに足のむくみを改善する薬の開発に着手。そうして完成したのが、現在でも販売されている静脈不全薬「CYCLO3(シクロトロワ)」です。これは、カストル周辺で生育している野生のナギイカダの根から抽出した成分を配合した医薬品で、織物工場で働く人々からとても喜ばれたそう。この成功を皮切りに、ピエール ファーブル社はオーラルケアやヘアケアの会社を次々に傘下に入れ、セルフメディケーションやビューティの分野にも事業を拡大していきます。

そんな先見の明のあったファーブル氏が次に着目したものこそ、古くから肌に良い水として知られていたアベンヌ温泉水。薬剤師として、薬局を訪れる顧客たちのさまざまな悩みと向き合ってきたファーブル氏は、医薬品で病気を治すだけでなく、日常的なケアでも健やかさを取り戻していくことの必要性を確信。1975年、第二次世界大戦の影響で閉鎖に追い込まれていたアベンヌ温泉水の源泉権利を買い取り、源泉の再開発とアベンヌ温泉水を使った製品開発に乗り出します。こうして、薬局で培った「おもてなし」の精神と、製薬・化粧品メーカーとしての高い開発力を融合させたアベンヌシリーズが誕生。これをきっかけに、ピエール ファーブル社は健康から美まで網羅するメーカーへと発展していったのです。

病気を治すように肌も積極的にケア!皮膚科医推奨「デルモコスメティック」

やがてアベンヌは、医薬品と化粧品の間に位置する「デルモコスメティック」として広く知られる存在になっていきます。デルモコスメティックとは、ギリシャ語で皮膚を意味する「デルモ」とコスメティックを掛け合わせた言葉で、皮膚科学に基づく研究によって開発された、低刺激で敏感肌の方も使用できる機能性化粧品のこと。一般のコスメよりも医薬品に近いカテゴリーに位置付けられた化粧品です。日本ではあまり耳にすることはありませんが、欧米ではとても人気があるそうです。

ピエール ファーブル社は、そんなデルモコスメティックの第一人者。もともとは、医薬品を服用することによる副作用で皮膚にトラブルが起きてしまう人のために考案されたもの。医師がお薬と一緒に処方箋に書くことができる、皮膚科医推奨の化粧品なんです。

いまやグループ全体の売り上げの55%を占めるデルモコスメティック事業。そのなかで、もっとも成功をおさめているのがアベンヌです。アベンヌ温泉水そのものが有効性を発揮するという大きな強みと医薬品メーカーならではの開発力で肌を積極的に健やかにしていく唯一無二のデルモコスメティックとして、世界中で愛され続けています。

製品が生まれる瞬間をキャッチ!化粧品の製造工場を拝見

アベンヌの製品工場も、テルマリズムセンターと同じように、アベンヌ温泉水源泉のすぐそばに建てられています。輸送によって水質が損なわれてしまわないよう、源泉から工場までステンレスパイプを通して、24時間365日ずっと同じ流量のアベンヌ温泉水が運ばれています。製品に使われなかった温泉水は、そのままオルブ川に流れ、地中海へと還っていくのだとか。

無菌状態で運ばれたアベンヌ温泉水は、無菌室でボトリング。ここで働くスタッフも、自身を20分も(!)かけて無菌状態にしてからじゃないと中に入れないという徹底ぶりです。こうした完全な無菌状態で製品をつくることはもちろん、処方や品質管理、テストの仕方に至るまで、すべて抗がん剤など医薬品製造で培った技術が生かされています。つねに医薬品レベルのクオリティを追求しているため、新しい有効成分を配合した新製品を発売するまでには平均で3年はかかるそう。信頼と手応えを掴むためにはどんな手間暇も惜しまない、その企業努力に拍手!

自然のチカラを肌に活かす!「水の研究所」&「ピエール ファーブル植物保存園」

ピエール ファーブル社の哲学は、「自然のチカラを借りて、本来の健康を取り戻すこと」。そのため、アベンヌ温泉水や植物成分の研究に余念がなく、南フランスを中心にさまざまな研究施設が設けられています。

そのひとつが、テルマリズムセンターの敷地内にある「水の研究所」。ここは、アベンヌ温泉水の誕生の秘密を探る場所であり、その水質や地質についての研究が行われています。また、アベンヌ温泉水のミネラル構成成分や源泉の湧出温度、病原菌の有無など、水質チェックも毎日ここで行われています。汲み上げた地下水の水質の監視、研究開発、そして学生やテルマリズムセンターの患者へ温泉水のストーリーをお話しするセミナーなども行なっているそう。

いまだ神秘のヴェールに包まれた、アベンヌ温泉水だけがもつ微生物相「アクアドロミエ」についても、ここで日夜研究が続けられています。

薬剤師でありながら農学士でもあったファーブル氏。全製品の70%に自然由来の有効成分を配合しているほど、植物のチカラを活用することにこだわってきました。植物の恩恵にあずかる立場だからこそ、植物を枯渇させないよう尊重しながら責任をもって開発していくことはメーカーの使命。そんな想いから設立されたのが、最新の製品に搭載する植物の栽培と研究、そして絶滅の危機に瀕している植物の保存などを行なう「ピエール ファーブル植物保存園」です。

ここには、熱帯性気候の温室と、乾燥性気候の温室、そして最新の研究に使われる植物を栽培している温室の3つのハウスに加え、10haの敷地内にさまざまな植物が自然栽培されています。温室では常時1000種類ほどの植物が栽培されていて、そのすべてに植物のデータがインプットされたチップがつけられ、世界の植物保存園と情報が共有できるようになっています。

建屋のなかの展示スペースには、ピエール・ファーブル氏が個人で所蔵していた薬草瓶がずらり。

18世紀の古い薬草瓶や1kgの金塊と同じ価値のある薬草が入れられた瓶まで、コレクションされています。

日本未発売のアベンヌがいっぱい!「ピエール ファーブル薬局」を訪問

ファーブル氏の故郷カストル。マルシェが開かれ人で賑わう中央広場には、ピエール ファーブル社の原点となった薬局が今も残されていて、医薬品はもちろん、アベンヌをはじめとするさまざまな デルモコスメティック製品を購入することができます。

もともとは小さな薬局でしたが、今では500平米の大きな薬局に。毎日およそ3000〜4000品目にものぼる医薬品や化粧品が入荷されています。この膨大な数を人の手ですべて仕分けるのは大変な労力が必要になることからロボットを導入しているそう。これほどの膨大な数でも、ロボットの手にかかれば入荷後わずか1時間で仕分けが完了。また、薬剤師からオーダーが入ったら、スピーディーにピックアップして、30秒ほどでカウンターへ届けられるという仕組みにもなっています。

500平米の店内には、診察室やデルモコスメティックを使ったタッチアップルームなどがあり、ここで薬剤師のカウンセリングを受けて薬を処方してもらったり、乳房を切除した人のための人工乳房を試着したりすることができます。これもまた、日本ではあまり見られない光景ですね。

さらに、本国フランスには、メンズライン、ベビーライン、ママラインのほか、ボディスクラブやボディオイル、サンケア、ベースメイクアイテムなど、日本未発売のアベンヌ製品が盛りだくさん。

パッケージもポップで、植物の香りが生かされているものもあり、なんだか新鮮!

3回にわたってお届けしてきた「アベンヌ村探訪記」も今回で最終回。美しい自然に恵まれた環境のなかで、50億年前の地層を50年以上かけてくぐり抜ける壮大な水の旅を経て、徹底した品質管理のもとに私たちの手元へ届けられことを知ると、アベンヌへの愛着がふつふつと湧いてきますよね。神秘的な水のチカラや美しい自然に想いを馳せながらお手入れを楽しんでくださいね。

Text:Naomi Sakai