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フランス便り

日本とは違うの? フランス人のヘアケア事情

Bonjour!
皆さまお元気ですか? 夏を楽しんでいますか? 太陽と仲良く過ごしていますか? パリジェンヌ達は、数週間の夏休みを終えて、肌は小麦色、髪は色素が薄くなりパサパサでパリに戻ってきています。そんなパリジェンヌの髪を見ていたら、以前、日本人の友人が言っていたことを思い出しました。

彼女はパリに来たばかりの頃、スウェーデン人とイタリア人と彼女の女子3人でルームシエアーをしていました。交代でバスルームのお掃除をすると、髪の毛が誰のものかすぐにわかったそう。柔らかな金髪のウェービーと、細い茶色のくるくる。太い黒の直毛。なぜにこんなに違うのか?とゲラゲラ笑っていたそうです。

パリ初心者が、失敗する事のひとつとして、美容院があります。
「何だかここはカッコ良さそう」と思い入ります。
まずは、シャンプー。そこで、失敗したと感じるのです。うわあああああ、ゆるすぎ!と…。
もっと、しっかり頭皮をマッサージしながら洗ってください!と言いたい。しかし、まだそんなフランス語スキルがない状態…。そんな事を考えているうちに、すでにリンス。流してタオルドライして、もう鏡の前。カットは写真を見せて「こんな風に」と頼むと、カッコいいお兄さんは、優しくオッケーと囁きます。ブローを終えると、写真と全然違う…。切ってしまった髪は、元に戻らず、料金の他にシャンプーをしてくれた人にチップまで払い、トボトボと素敵な美容院を後にするのです。
パリでヘアカットをなさりたい方は、日本人が働いている、または日本人客が多い美容室にいらしてください。

では、ビューティの都なのに、なぜパリの美容院でこんなことが?
それは、毛髪のタイプが全く違うからなのです。白人の髪の毛を触ったことがありますか?あら〜と思うぐらい頼りないのです。細くて、ふにゃふにゃ…。調べてみると、東洋人の毛髪断面はまん丸。比べて白人の断面は楕円形だそう。そして太さも、東洋人は西洋人の1.5倍もの太さがあるんですって。そのうえ、直毛。

以前パリコレで、流行ったのが黒のストレートおかっぱ。世界的に見ても日本人のような髪は非常に珍しく、白人にとっては、太くてストレートな黒髪は、憧れなのです。
私も日本に帰るたびに、日本人女性の髪は、本当に綺麗だと思います。

パリで活躍している仲良しのヘアメークさんが教えてくれたのは、白人の髪の毛は、猫っ毛。ゆるい、きついの差はあってもウェービーなので、ある程度ざっくり切っても、格好がつくそうです。シャンプーをガシガシやらないのは、髪の毛が細くて絡まってしまうから。決してやる気がないわけではないのですね。白人の髪の毛は傷みやすいため、ふわふわ洗うそうです。

そういえば、フランス人女子が「あなたの髪は、丈夫そうでいいわねえ。私の髪は、デリケートで傷みやすいの」と話す場面に何度も遭遇しました。「私の肌は敏感なの」といかにも自分がデリケートで繊細であるかを主張するのと同じ!と思っていましたが、本当に傷みやすいのですね。

そんなパリジェンヌのヘアケアで驚くのがシャンプーです。なんと、週に2、3回しか洗いません。理由は、水が硬いため。石灰分が多い硬水なので、何度も洗うとバサバサになるから。空気が乾燥しているから汚れないと言うパリジェンヌもいます。とはいえ、パリ在住の日本人たちは、少なくとも一日置きにはシャンプーをしています…(笑)。
ちなみに、綺麗な髪をしているパリ女子たちは、だいたい、天然系シャンプーや、ベビー用のシャンプーを使っています。先日、チェーンスモーカーに大酒飲みのミュージシャンの家に撮影に行った時のことです。バスルームをお借りすると、シャンプーもコンディショナーもオーガニックだったのでびっくりしました。体には悪いことをしていても、髪の毛には、マイルドなのねと。

そんな風に、フランス人は自然と伝統が大好きです。とても良い事だなあと感心するのは、おばあちゃんの知恵袋、知恵を活用している若い子たちが、結構いることです。
ちなみに、フランスには本当の金髪女性は、ほとんどいません。ほとんどが、偽ブロンドです。そんな金髪のケアにいいと言われているのが、寝られない時に飲むといいと言われているカモミール。大量にカモミールティーを作り、まずはゆっくり飲みましょう。その後、シャンプーを。作ったカモミールティーの残りが冷めた頃、そのお茶でリンスすると、金色が保てるのだそう。
また、夏の日焼けで傷んだ髪には、全卵とはちみつを混ぜたものでパックをします。髪の毛全体になじませ、15分ほど放置してからシャンプー&コンディショナー。
ハイダメージの髪には、黄身とはちみつでパックを作り、蒸しタオル+シャワーキャップで浸透させます。残った白身はメレンゲを作ってオムレツなどにすればエコですね。この方法は、フランスの北西部ノルマンディーにおばあちゃんがいるという若い子から聞きました。「うちでは、そこにオリーブオイルを入れるよ!」と言い出した別の子のおばあちゃんは、南仏生まれだそう。地域によって多少の差はありますが、フランス人は、本当に天然物が好きなようです。

そんなパリジェンヌの嗜好もあってか、この頃パリでは、オーガニック美容院が増えています。シャンプー、リンス、コンディショナー、カラー、すべてビオのアイテムを揃えています。パーマは、どうするのでしょうかね。今度行ってみます。

撮影で出張が多い私ですが、ある時シャンプー&コンディショナーを忘れてしまいました。浴室には、固形石鹸のみ。お隣のお部屋でお休みの編集さんやライターさんを起こすのは悪い、深夜。しかし、汗と塩風で髪はベタベタ。仕方がないので、バサバサでもいいから石けんで洗おう、どうせ仕事だし、と覚悟しました。その時、窓の外に実っているレモンに気づきました。いつかどこかで読んだ「レモンでリンス」。石鹸はアルカリ、レモンは酸性なので中和できるとか、できないとか…。で、やってみました。全身を固形石けんで洗い、レモン1個分を力いっぱい絞り、お水で薄めてリンスに。すると、ギシギシしていた髪が、レモン水の中で柔らかく踊っていました。翌朝は、何事もなかったように撮影にとりかかれました。

こんな風に、キッチンにはヘアケアもできる素材がたくさん。きちんと使えば、経済的で安心なトリートメントになりますね。日本女性の髪は、世界に誇れる美しい髪です。どうぞ、大切にしてください。
さあ、夏の終わり、どんなヘアトリートメントをなさいますか?

ピックアップアイテム
髪にも肌にもうるおいを
取材協力 YOLLIKO SAITO 写真家

日本大学芸術学部写真学科卒業。広告制作会社勤務後フリーになる。現在、パリを基点としてヨーロッパ、アフリカなどで活躍。日本の女性誌、書籍、広告の他にアート作品の写真展をパリ、ベルリン、銀座で定期的に開催。ビオ、自然食、自然治療にも関心が強く、自他ともに認める「健康マニア」。自宅で栽培しているオーガニックハーブを使った料理をもてなしたり、ナチュラル・オーガニックコスメなどの美容情報にも精通。