パリジャン・パリジェンヌたちのワインのたしなみ方
Bonjour!
みなさま お元気ですか?
ある午後、カフェのお隣のテーブルの会話が、聞こえてきました。
“早いわね、ちょっと前までロゼを飲んでいたのに、もうプレタ(=プレタポルテ・コレクションのこと。フランスで行われる高級既製服の展示会で、フランス以外の国から多くのデザイナーが参加する)の時期よ”と、いかにもファッション業界関係のマダム達が、白ワインを飲みながらおしゃべりしていました。
この文章には、フランスの<季語>があるな、と思いました。その答えをお分かりの方は、ワインが、お好きですね。正解は、<ロゼ>つまり<夏>です。そろそろ半袖かなと思う頃になると軽くすっきりした味の、ロゼを飲み始め、ヴァカンス先では、大量摂取。長い夏休みが終わってパリに帰ってくる頃には、白や赤のワインになります。
日本からお越しの方とビジネスランチをする時に、“ええ?ランチでワイン??飲んでいいのですか?上司に怒られませんか?”と質問されることがありました。私にとっては普通になっていますが、日本との違いを感じます。
普通のフランス人家庭のご飯の時間、フランス人はダイニングテーブルに食事のセッテングをします。大げさなものでなく、日本でお箸やお箸置き、お茶碗、小皿を出すのと同じで、フランスでご飯の時は、メインディッシュとその右にナイフ、左にはフォーク。お皿の上にはデザートのスプーン。お皿の左上には、グラスを2個。1つは、お水用。もう1つは、ワインのためです。メインがお魚とお肉のときは、グラスがもう1個、ワイン用として追加されます。
フランスのどこのお父さんも大抵ワイン好きで、こだわりがあります。ヴァカンスに行った先や出張に行ったついで、また各地方のワイン農家がパリに持ってくるフェアなどで、箱(12本)で買ってくるのです。気に入ったシャトーのワインはお取り寄せをしたり、手頃でこんなに美味しいワインを見つけたと自慢したり、楽しんでいます。ワインがなければ、生きていけないという感じですね。大量買いをしたのに、すぐに飲まない…買ったもののうち、若すぎるワインは、数年寝かせるのです。これらの大量のワインは、どこに置くのでしょうか?
パリには、一軒屋がほとんどなく、パリの人々はアパートに暮らしています。(あっ、日本では、マンションと呼ぶのですね。こちらでは、300平米の豪華なお宅でも、アパートと言います。)そのアパートには、地下にカーブと言われる物置が、1軒ずつあります。ちょうど1年中同じ温度なので、みなさま、そこにワインを置いています。
ワインを飲むときは、必要な分だけ家に持って上がります。
フランス人は、ワインがないとご飯が食べることができない…ちょうど、日本人にとってのお味噌汁、お吸い物みたいな物かな、と日本通のフランス人が言っていました。
フランス人にとって、ワインはただの飲み物ではなく、深い深い意味があるようです。教会の礼拝の時には、キリストの血として赤ワインを使います。日常のテーブルに必ずあるもの。疲れを癒してくれるもの。自然が与えてくれた宝物。フランスの伝統文化なのでしょう。
良い習慣だなと思うことがあります。それは乾杯する時、いちいち、何かにと言って乾杯をすることです。
一般的には、“アサンテ!健康に!”と言ってグラスをチン。仕事仲間とは、“我々のプロジェクトに!”。
試験の前日には、明日の成功に! お葬式では、亡くなった方へ。旅行前には、良い旅を。お熱いラブラブカップルは、アスソワール、今夜に!と声を出して乾杯しています。日本人にあまりない、言葉に出して気持ちを表現する、いいことですね。
若い子たちは、毎日ワインを飲まなくなってきています。が、お友達が来るときや、特別な時には、ワインを用意します。近くのワイン屋さんへ行って、これから何々を作るのですが、いくらぐらいでこんな感じと希望を言いますと、おすすめを出してくれます。お手頃価格のワインでそのシチュエーションを楽しむ、大切なことですね。お宅のご飯へ招待された時は、お花やワインを持って行くことがよくあります。ご飯前にビールを飲むことはあっても、お食事中は、ワインです。
フランス料理とよく合い、一層おいしくしてくれます。おしゃれなムッシュー達は、言います。“ウイスキーやコニャックは、男の飲み物。マダム達には、エレガントなワインを飲んで欲しい”と。
街角のテラスでワインを飲んでいる素敵なマダム達。
このようなマダム達が、世界の人たちが、憧れる町の雰囲気を作っているのでしょう。