夏を全力で楽しむ!フランス人の「バカンスの過ごし方」
8月のフランスといえば、それは、バカンスです! パリ祭の7月14日前後の週末からパリに人が居なくなる…消えるんです。
一方で、一目で分かる観光客は増えますが…(笑)、地元の商店街は寂しいくらい静かに。お店のショーウィンドウには、ベタベタと休業を告げる紙が張られていて中が見えません。そんなお店が、隣にも向かい側にもあります。
7月のバーゲンセールで売るだけ売って、バカンスに出かけるのです。
ひとつおもしろいお話を。
どこの商店街にも、決まって八百屋、肉屋の他にパン屋が2軒以上あります。
普段は個人主義でジェラシーが強いフランス人ですが、バカンスになると協力し合います。パリに残っている人が困らないよう、なんとパン屋さん同士が話し合って、順番にお休みを取るというんです。
フランス人にとってパンは命ですから。
目次
バカンスは貴族の風習のなごり?
昔は、長期休暇を楽しんでいたのは貴族やブルジョア階級の人のみで、大多数の普通の人々は過酷な労働を強いられ、長い休暇なんてなかったそうです。労働者は立ち上がりストライキやデモを起こし、1938年頃、バカンスの権利を手に入れたとのこと。
フランス人のバカンスと聞くと、豪華客船で外国へクルーズとか、遠い外国で異文化を満喫なんてことを想像してしまいます。こういった人たちは、ほんのひと握りであり、少数派。大多数は、国内か近隣国に行きます。それも、親戚の家とか友人の家に滞在する人たちがほとんどです。
バカンスは特別な暮らしではありません
私がパリに住み始めた頃、パリの友人から「おばあちゃんの田舎の家にいるから、バカンスにおいでよ」とお誘いをいただきました。
お土産を揃えて、どんなことがあるか分からないからと、あれこれとシチュエーションを妄想して、オシャレな洋服をトランクに詰め込み、向かいました。
まず、お昼ご飯の前に食前酒とおしゃべりがスタート。食欲を促す食前酒…お腹がグーグーと鳴っているにもかかわらず、未だお昼ご飯が始まりません! イライラし始めた頃、やっと“ご飯ですよー”の声。
テーブルに駆けよるとロゼワイン。夏のバカンスにはロゼがお決まりです。1番最初は、早朝、お庭で取った野菜のサラダ。こちらの家庭のサラダは、大きなボールに野菜を入れてその上から塩、ビネガー、各種油、胡椒かマスタードを豪快にかけてできあがりなのです。
美味しい……。
日本にいた頃はドレッシングに懲っていましたが、こちらの野菜は味が濃いので、シンプルなドレッシングが一番。メインは羊の大きな塊をローストしたものでした。
デザートは、友人のママによる絶品の生アンズのタルトです。市販のタルト生地が売っていますが、彼女は一度も買ったことがないそうです。日本では考えられないような大きなサイズのタルトを全員ぺろりと食べ終わると、コーヒータイムが始まります。
おばあちゃんが「忘れていたわ」と、メロンを、おじいちゃんは「これに合うから」と、強いお酒を出してきました。
既に16時。“ごちそうさま”とおチビさんたちは、お昼寝をしに席を立ちます。男性陣はプールサイドで葉巻に食後酒、読書など思い思いの時間を過ごします。女性たちは「近くの村まで夕食のお買い物に行くわよ!」と元気!
20時過ぎから夕ご飯が始まり、23時頃まで続いたのでした。
翌朝、着替えを済ませ、ナチュラルメイクをしてダイニングへ降りて行くと、皆思い思いのことをしています。パジャマ姿でコーヒーを飲んでいたり、ひと泳ぎした水着姿のおじいちゃんは、オレンジジュースを絞っていたり…ガウン姿でクロワッサンにたっぷりバターとジャムを付けて食べているマダムも。なんと皆さまラフな装い。
「朝ご飯ですよ」なんて、誰も呼びに来てくれなかったのが分かりました。自由なのです。バカンスなのだから、いつ起きてもいいし、好きなことをしていいのです。
「コムシェヴ!(心地よい場所)」自分の家のようにして、と。
これが、フランス式歓迎の心なんですね。この国の人たちのバカンスは日本人のように毎日観光はしません。
場所を海や山に変えますが、普段の週末のように旅先で10日、2週間と暮らすように過ごします。特別に何をするわけでもありません。
何もしないバカンスなんて、想像できますか? でも、それがフランス人の過ごし方なのです。
たくさん持って行った、オシャレな服や靴のほとんどが手つかずのままだったことは言うまでもありません。
皆さんもゆっくりとしたフランス式バカンスを過ごしてみてはいかがでしょうか?